









「うつわノート展」の5日目。
中国 景徳鎮で制作する一之(イーヂィー)さんをご紹介します。一之は中国での屋号で「ひとつの」を意味しますから、唯一のとか、ただひとつのといった意味合いでしょうか。ご本名は史英之さんと言い、1995年生まれ、今展一番の若手作家になります。2019年夏に景徳鎮を訪ね際に出会いましたが、急須を作り始めてまもない頃でした。とても真面目に取り組んでいる好青年の印象が残っています。意外ですが、景徳鎮は分業が進んだ産地ですから、個人でろくろ挽きして作る作家は少ないのです。
ご覧の通り、繊細な造りの小さな茶壷で、薄口の蓋周り、ささくれた土、焼成痕の景色など、全体的に侘び枯れた風合いを捉えた老成した急須に仕上がっています。中国茶向きの茶壷ですが、珍しく横手であり、今回は煎茶でも使えるように中にメッシュの茶漉しを付けてくれています。
伝統的な陶器からインスピレーションを受け、景徳鎮の伝統工芸と轆轤挽きを融合させ、薪窯焼成を用いて陶器や茶道具を制作しています。繊細な内面的美意識を保ち、素朴で侘び寂のある「不器用な美しさ」を心掛けています。
陶芸と同時に盆栽を学んだ経験から、自然の変化を注意深く観察し感じることが大切だと考えています。その信条ゆえに、急須の表面に現れる枯れ木のような自然なテクスチャーは、薪や籾殻などを燃やした灰がもたらす斑点や黒ずみなどによって長年の月日を経た痕跡のように表しています。
中国の若い作り手が、侘び寂を尊び、盆栽を学び、薪窯で急須を焼く。日本の美意識を取り入れながらも、日本の急須とは違った表現が新鮮ではないでしょうか。まだ日本では見ることが出来ない一之さんの急須をぜひこの機会にご覧ください。
一之(@yizhi.123)
1995年 中国生まれ
2016年 景徳鎮陶芸デザイン卒業
2016年 卒業後轆轤を学び、茶壷制作を始める
2016年 盆栽と写真を学ぶと共に轆轤を続ける
2019年 景徳鎮に工房を開設し茶壷の制作を行う
2024年 現在 景徳鎮にて制作
【うつわノート展】
2024年4月6日(土)~13日(土)
11時~18時まで 最終日は17時まで
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
電話 049-298-8715
メール utsuwanote@gmail.com
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