Quantcast
Channel: うつわノート
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4275

「青花工芸祭」2/14・15・16

$
0
0
_d0087761_18281715.jpg

_d0087761_18282867.jpg

いよいよ「青花工芸祭」の開始まであと1日となりました(2/14は会員のみ、2/15、16は一般公開)。

ここであらためて青花工芸祭のテーマである「生活工芸以降の工芸」について私見を記しておこうと思います。まず「生活工芸以降の工芸」を語る前提として、そもそも「生活工芸」とは何なのか?その意味はどこにあるのか?

暮らしに添った手作り工芸作家が現れ始めたのが1990年代にと言われます。その後2000年代に入り一挙にその裾野が広がりました。簡潔に言うと平成時代(1989~2019年の30年間)に勃興した日常側の価値観に立脚した手作り作家による新種の工芸です。狭義には三谷龍二、赤木明登、内田鋼一、安藤雅信、辻和美(敬称略)の5人と言われます(工芸青花の菅野さん定義)が、個人的にはその頃に興った工芸全般の一連の出来事と広義に捉えています。

もちろん暮らし向きの道具は、平成以前も脈々と作り続けられていた(民芸など)訳ですし、茶碗であろうが酒器であろうが日常の中の美という文脈で語ることも出来ますが、例えば陶芸に限って言うなら、それ以前の陶芸家にとっては暮らし道具は雑器であって、芸術ではないとされ、大正・昭和以来ずっと伝統や美術あるいは前衛の作品主義的な系譜を辿ってきました。意外にも暮らしの器を標榜する作り手は、ほぼ居なかったと言われます。工芸は特殊領域に向けた「芸術品」としての振舞いを求められたのが昭和時代のだったのです。

その価値観が変わり始めたのが、平成時代を代表する「生活工芸」でした。特殊なステージから一般庶民の生活感覚に添った工芸作家の登場です。それは日常の生活空間において特殊なものではなく、衣服や音楽や料理と同様に、暮らしの横軸で結ばれたものでした。1983年に無印良品の1号店が青山に出来、1984年~1985年に、うつわも生活道具も同列に扱う「zakka」「ファーマーズテーブル」「くるみの木」がオープンしたことからも、殿方的な観念論ではなく、女性主体の実用と感性に目を向ける象徴的な出来事だったと思います。そう、工芸の社会認識がより軽やかになったのです。

それはちょうど100年前の19世紀末に興った印象派絵画の動きに例えると分かり易いかもしれません。それまでは宮廷向けのサロン画が中心であった絵画が、外に出て外光の中で、より日常性を描く転機となり、技巧よりも簡素な描き込みの状態で感性主体の絵画時代の幕開けとなりました。しかしサロン側の人達は、当時この意味は分からなかったと思います。何故なら特殊な閉鎖社会の中で価値評価に終始していたからです。

印象派の登場によって市場が一般に解放されて、売買の主軸が移行することで新たなパイを生みます。さらにその価値が一般化するとたくさんの作家が参入し、多義に渡る価値が広がります。印象派の辿った道筋を考えると、その後、フォービズムやキュビズムのような象徴主義や抽象画に展開し、さらにカンディンスキー、モンドリアン、マレーヴィチなど概念が表現を超える時代になっていくのです。

もし「生活工芸」が工芸における印象派のような現象であるとするなら、再びサロン画の全盛は考えづらい。特に階層の少ない日本ではよりフラットにその経済は広がっていくのでしょう。興味深いのは生活工芸の発生から30年が経ち、その様相が変わってきていることです。うつわの抽象化の現象、あるいは新種の表現主義などまさに印象派以降の世相に重なるのです。「生活工芸」以降も、また新たな時代を迎えているのです。

最後に付け加えるなら、印象派を支えたのは画家の力だけでなく、その価値を広げた画商たち(ポール・デュラン=リュエルやアンブロワーズ・ヴォラール等)の存在も無視できません。作り手たちにとって勝手にカテゴライズされる違和感もあると思いますが、一方でそれを定義づけるギャラリスト、評論家、メディアが居ることによって歴史に記録されるという事実にも目を向けて頂ければと思います。

今回の工芸祭のテーマ、「生活工芸以降の工芸」はこういう視点からも会場に並ぶギャラリーとその作品を俯瞰すると面白いと思います。おおげさに言うなら、歴史の瞬間に立ち会えると(笑)。時にはこうして考える機会も良いと思います。少し前とはプレイヤー(ギャラリーや作家)も何かが変化しているなと感じて頂ければと思います。


青花の会|工芸祭 
「生活工芸」以降の工芸

2月14日(金)17~20時(青花会員と御同伴者のみ)
2月15日(土)11~20時
2月16日(日)11~17時

会場:BOOTLEG gallery 東京都新宿区改代町40
江戸川橋駅より徒歩5分/神楽坂駅より徒歩7分

見料:500円(青花会員は無料)

主催: 新潮社 青花の会

監修: 山内彩子(Gallery SU)松本武明(うつわノート)

参加ギャラリー:
翫粋(京都) 
水犀(東京) 
cite’(広島)
GALLERY crossing(岐阜) 
Gallery NAO MASAKI(愛知)
Gallery SU(東京)
NOTA_SHOP(滋賀) 
OUTBOUND(東京) 
pragmata(東京)
SHOP & GALLERY YDS(京都) 
toripie(京都/大阪)
ギャラリーうつわノート(埼玉)

詳細はこちら
https://www.kogei-seika.jp/seikafes/kogei2020.html

_d0087761_1715684.jpg_d0087761_17153137.jpg

Viewing all articles
Browse latest Browse all 4275