

10月9日(土)から17日(日)まで開催する「芳賀龍一展 ボーダーレス」のご案内です。
芳賀龍一展 ボーダーレス
陶芸は近代になって化学的に分析され、粘土や釉薬の性質が明確になることで安定した生産が可能になりました。その進歩により今では誰もが技術マニュアルに従えば、多彩な表現の器づくりが可能な時代です。また昭和初期の桃山再興ブームにより古陶磁が巨匠たちによって再現され、陶芸の美的セオリーが確立しました。乱暴な見解になりますが、昭和に完成されたこの陶芸の技術や美的基準に沿って、そこを極めるのか、あるいは脱却して革新するのか、いずれであっても未だに大きな手のひらの上で陶芸は成されているように思います。
栃木県益子町の芳賀龍一さんの陶芸は、まず素材を見つけることから始まります。北関東の土や河原の石を歩いて探し、焼いて試す。本来、地殻変動によって生成された岩石と土は分離したものではなく、風化した砂と有機物が混合して土壌になったものです。高温で焼くことによって、その性質は明らかになり、焼き物として成立します。
芳賀さんの場合、マニュアル的な陶芸からはアプローチせず、素材の境界線がありません。では焼き物原理主義かと言えばそうではなく、また前衛陶のアーチスト志向かというとそうとも言い切れません。意外なことに彼の原点には加藤唐九郎があり、正統派焼き物の美学が根底にあるのです。茶陶に類する筒茶碗もあれば、実験的に焼かれた土の作品も並列に置かれる。土も石も区別なく、また保守的な焼き物からオブジェにも取り組む。このように芳賀さんは従来の境界を越えてあらたな意識で捉えているところに新しさがあります。
既存の方法と価値観を一度解体して再構築するということは、確立したマーケットにはすぐには受け入れられづらいはずです。しかし彼の興味は「これを焼くと一体どうなるんだろう?」というシンプルな問いかけに収斂していくのです。市場に媚びず、既成の枠には収まらないボーダレスな作家、芳賀龍一さん。弊店で第二回目となる個展です。どうぞご自身の眼でその境界をお確かめください。店主
芳賀龍一プロフィール
