
12月16日(土)から始まる「中田光展 文人茶」の出品物です。
南蛮茶注(なんばん ちゃつぎ) 径9・高さ7cm・120ml
群馬の土による南蛮焼〆の横手急須。常滑で学び、万古の黒泥焼を創出した明治の陶工・磯村白斎(いそむら-はくさい1851-1920)や常滑焼の一種である西端焼を生み出した滝田椿渓(たきた-ちんけい1851-1920)の影響を受けています。
注目したいのは注ぎ口や把手の末端処理。それぞれのパーツをろくろ挽きした後に、敢えて整えずに、土のくせをそのまま残しています。急須は機能性が問われるゆえに、整然と仕上げることが多いですが、このような歪(いびつ)さを良しとするのは、機能とはまた違った美の尺度があるからです。
抹茶碗の造形では当たり前の形や釉調の不完全性は、侘び寂の美として成立していますが、一方パーツが多く、注器である急須で受け入れるには、機能の軸を保ちつつ曖昧さを見どころとする感性が必要になります。
不思議なことに江戸末から明治ごろの陶工の急須には備わっている「粋(いき)」な造形美ですが、これを現代の中田さんが、ご自身の勘所で捉えようとしている点に着目したいと思います。前出の白斎や椿渓の影響を受けたのは、きっとそういう感覚野だと思います。
中田光展 文人茶
2023年12月16日(土)~23日(土)
作家在廊日 12月16日
11:00~18:00 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6
プロフィール
1983年 神奈川県生まれ
2006年 武蔵野美術大学 デザイン情報学科卒
2008年 武蔵野美術大学大学院 陶磁専攻修了
2013年 群馬県桐生市に築窯
2023年 現在同地で製作

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