「 橘 岳 ・ 鈴木 都 二人展 ~古瀬戸と美濃~ 」(~1/27迄)を開催中です。
鈴木都(しゅう)さんの作る茶碗。それは、桃山陶を代表するものです。室町時代の唐物趣味から、侘び茶への移行と共に生まれた国産の焼き物。それが、美濃の志野・黄瀬戸・瀬戸黒・織部のスタイルです。それは、まさに日本の焼き物史におけるルネサンス。今でも茶の湯の世界で根強い人気を誇っています。
その中でも、鈴木さんが今回出展したのは、志野と黄瀬戸の2種の茶碗です。写真で伝わる通り、30歳になったばかりとは思えない熟達した出来映えです。
志野。筒形をヘラで細工した動きのあるフォルム。長石釉を纏った白の焼き物。下地に施された鬼板と呼ばれる泥漿で描かれた鉄絵。志野茶碗の基本スタイルです。元来は、天目形の茶碗に長石を施し(白天目)、白磁を意図したとも言われますが、それが桃山期に変化して、この独特の造形を生み出しました。
一方の黄瀬戸は、美濃陶の中でも一番最初に作られたスタイルで、その祖形は古器を写したものが多く、志野や織部のような強い造形はありません。その分、端整な形に、淡い黄色、その中に描かれるタンパンと鉄による緑と茶の模様が、静かに枯れた景色を湛えます。
生活食器が全盛の中にあっても、いまだ茶碗は、陶芸家にとって特別な存在です。厳選した素材に、選び抜いた形と焼き上がりのものだけを、茶碗とする事が多い世界です。
陶芸の文化を支えてきた茶の湯の道具なだけに、単なる機能性で語られるのではなく、むしろ茶という舞台を演出する道具として特殊性を帯びた器です。それは、擬似的に自然を様式化した茶のステージに於ける美のフォーマットでもあります。その意味で、作為を前面に出して作られた志野茶碗は、その舞台で主役を演じる役者とも言えましょうか。
茶碗は、一般の食器の在り方に対して、その権威や閉鎖性も問われることもありますが、これは食器との比較で語るよりも、ある約束事の中で美意識を競う盆栽の評価や、陶土による彫刻的な作品として捉えた方が素直な見方が出来るかもしれません。この特殊性ゆえ、限られた流通の中で価値が序列化され続けるユニークな焼き物なのです。
鈴木さんと美濃焼き物の出会いは、小学生の頃まで遡ります。その時に手にした加藤唐九郎著の「やきもの教室」(とんぼの本)がきっかけで、やきものへの興味が沸いたそうです。その早熟ぶりはなかなかなもので、自分で土堀りに出掛けたり、古い窯跡を訪ねたり、老舗の焼き物店(黒田陶苑など)に通ったりと、老成した愛好家のごとく、幼少の頃から「焼き物少年」でした。高校時代まで続いた焼き物熱は、その後は一旦、音楽や舞台の道に移りますが、26歳の時に再び、瀬戸の窯業学校で専門的な陶芸技術を学びました。
この鈴木さんの経歴からすれば、陶芸を職とするのは自然な事だった訳で、それも憧れの加藤唐九郎が主とした美濃の焼き物スタイルを探究するのも必然であったと言えるのです。
陶芸家を先生と呼ぶことが今だ健在の美濃スタイルの焼き物の世界。子供の頃から憧れ続けてきた一途な世界ですが、焼き物の家系の後ろ盾もなく、30歳になったばかりの鈴木さんが、どう立ち向かうのか。この確立したスタイルに、どう新しい風を吹きいれるのか、そんな興味も合わせて注目して欲しい作り手なのです。
赤志野茶盌 No.14 径12.5cm 高さ8.8cm
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志野茶盌 No.1 径12.5cm 高さ8.5cm
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紫志野茶盌 No.15 径12.7cm 高さ8.7cm
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志野茶盌 No.13 径11.7cm 高さ8.5cm
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志野茶盌 No.12 径13.0cm 高さ9.2cm
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志野茶盌 No.10 径13.5cm 高さ8.1cm
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志野茶盌 No.11 径12.9cm 高さ8.6cm
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黄瀬戸茶盌 No.152 径15.1cm 高さ6.3cm
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黄瀬戸茶盌 No.156 径11.2cm 高さ7.1cm
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黄瀬戸茶盌 No.153 径10.9cm 高さ7.6cm
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橘 岳 ・ 鈴木 都 二人展 ~古瀬戸と美濃~
2015年1月17日(土)から27日(火)まで 会期中無休
営業時間 11時~18時
ギャラリーうつわノート (地図)
画像クリックで拡大
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橘 岳 (たちばな・がく)
1978年 千葉県生まれ
2004年 一橋大学社会学部卒業
2010年 愛知県立窯業高等技術専門校修了
2014年 現在、愛知県瀬戸市で制作
鈴木 都 (すずき・しゅう)
1984年 東京都生まれ
1997年 美濃古窯跡を訪ねる
2011年 愛知県立窯業高等技術専門校修了
2014年 現在、岐阜県土岐市で制作
鈴木都(しゅう)さんの作る茶碗。それは、桃山陶を代表するものです。室町時代の唐物趣味から、侘び茶への移行と共に生まれた国産の焼き物。それが、美濃の志野・黄瀬戸・瀬戸黒・織部のスタイルです。それは、まさに日本の焼き物史におけるルネサンス。今でも茶の湯の世界で根強い人気を誇っています。
その中でも、鈴木さんが今回出展したのは、志野と黄瀬戸の2種の茶碗です。写真で伝わる通り、30歳になったばかりとは思えない熟達した出来映えです。
志野。筒形をヘラで細工した動きのあるフォルム。長石釉を纏った白の焼き物。下地に施された鬼板と呼ばれる泥漿で描かれた鉄絵。志野茶碗の基本スタイルです。元来は、天目形の茶碗に長石を施し(白天目)、白磁を意図したとも言われますが、それが桃山期に変化して、この独特の造形を生み出しました。
一方の黄瀬戸は、美濃陶の中でも一番最初に作られたスタイルで、その祖形は古器を写したものが多く、志野や織部のような強い造形はありません。その分、端整な形に、淡い黄色、その中に描かれるタンパンと鉄による緑と茶の模様が、静かに枯れた景色を湛えます。
生活食器が全盛の中にあっても、いまだ茶碗は、陶芸家にとって特別な存在です。厳選した素材に、選び抜いた形と焼き上がりのものだけを、茶碗とする事が多い世界です。
陶芸の文化を支えてきた茶の湯の道具なだけに、単なる機能性で語られるのではなく、むしろ茶という舞台を演出する道具として特殊性を帯びた器です。それは、擬似的に自然を様式化した茶のステージに於ける美のフォーマットでもあります。その意味で、作為を前面に出して作られた志野茶碗は、その舞台で主役を演じる役者とも言えましょうか。
茶碗は、一般の食器の在り方に対して、その権威や閉鎖性も問われることもありますが、これは食器との比較で語るよりも、ある約束事の中で美意識を競う盆栽の評価や、陶土による彫刻的な作品として捉えた方が素直な見方が出来るかもしれません。この特殊性ゆえ、限られた流通の中で価値が序列化され続けるユニークな焼き物なのです。
鈴木さんと美濃焼き物の出会いは、小学生の頃まで遡ります。その時に手にした加藤唐九郎著の「やきもの教室」(とんぼの本)がきっかけで、やきものへの興味が沸いたそうです。その早熟ぶりはなかなかなもので、自分で土堀りに出掛けたり、古い窯跡を訪ねたり、老舗の焼き物店(黒田陶苑など)に通ったりと、老成した愛好家のごとく、幼少の頃から「焼き物少年」でした。高校時代まで続いた焼き物熱は、その後は一旦、音楽や舞台の道に移りますが、26歳の時に再び、瀬戸の窯業学校で専門的な陶芸技術を学びました。
この鈴木さんの経歴からすれば、陶芸を職とするのは自然な事だった訳で、それも憧れの加藤唐九郎が主とした美濃の焼き物スタイルを探究するのも必然であったと言えるのです。
陶芸家を先生と呼ぶことが今だ健在の美濃スタイルの焼き物の世界。子供の頃から憧れ続けてきた一途な世界ですが、焼き物の家系の後ろ盾もなく、30歳になったばかりの鈴木さんが、どう立ち向かうのか。この確立したスタイルに、どう新しい風を吹きいれるのか、そんな興味も合わせて注目して欲しい作り手なのです。
赤志野茶盌 No.14 径12.5cm 高さ8.8cm



志野茶盌 No.1 径12.5cm 高さ8.5cm



紫志野茶盌 No.15 径12.7cm 高さ8.7cm



志野茶盌 No.13 径11.7cm 高さ8.5cm



志野茶盌 No.12 径13.0cm 高さ9.2cm



志野茶盌 No.10 径13.5cm 高さ8.1cm



志野茶盌 No.11 径12.9cm 高さ8.6cm



黄瀬戸茶盌 No.152 径15.1cm 高さ6.3cm



黄瀬戸茶盌 No.156 径11.2cm 高さ7.1cm



黄瀬戸茶盌 No.153 径10.9cm 高さ7.6cm



橘 岳 ・ 鈴木 都 二人展 ~古瀬戸と美濃~
2015年1月17日(土)から27日(火)まで 会期中無休
営業時間 11時~18時
ギャラリーうつわノート (地図)


橘 岳 (たちばな・がく)
1978年 千葉県生まれ
2004年 一橋大学社会学部卒業
2010年 愛知県立窯業高等技術専門校修了
2014年 現在、愛知県瀬戸市で制作
鈴木 都 (すずき・しゅう)
1984年 東京都生まれ
1997年 美濃古窯跡を訪ねる
2011年 愛知県立窯業高等技術専門校修了
2014年 現在、岐阜県土岐市で制作